3.2.1 厚さ計

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 厚さ計は、放射線が物質を透過する際、吸収・散乱で減衰する性質を利用し、被測定体の厚さを非接触で測定する装置です。使用される線源核種は、その目的や用途によって異なりますが、一般的に金属製品を測定する厚さ計には137Cs、または241Amのような透過力の強いγ線源が用いられ、検出器には電離箱、もしくはプラスチックシンチレータが用いられます。紙・プラスチック等の測定には、85Krまたは147Pmのような弱いエネルギーのβ線源が用いられ、検出器には電離箱が用いられます。また、ゴムや比較的厚いプラスチックシートの測定には、90Srのような高いエネルギーのβ線源が利用されています。
 主な応用例としては次のようなものがあり、きわめて多岐にわたっています。

1) 冷間圧延金属板の厚ざ測定 ・・・・・・・ 鉄鋼業、非鉄金属業等
2) 熱間圧延の板厚測定 ・・・・・・・ 鉄鋼業
3) 製紙工程における紙の坪量(1m2当りの質量)測定 ・・・・・・・ 紙・パルブ工業
4) ブラスチックフィルムおよぴセロファン等のシートの厚さ測定 ・・・・・・・ 化学工業
5) ゴムシートの厚さ測定 ・・・・・・・ ゴム、タイヤ工業
6) 金属板のメッキ層の厚さ測定 ・・・・・・・ 鉄鋼業
7) 建築材料用合板の厚さ測定 ・・・・・・・ 建材業

これらの産業分野において厚さ計を使用することの重要性は非常に高くなっています。紙パルプ業界での代表的なB/M計(坪量計と水分率の測定装置)は、製紙装置の一部になっており、品質面はもちろんのこと、操業面でも不可欠なものとなっています。また、鉄鋼業等においても製品の厚さむらによって受ける経済的損失は、製紙業界の場合よりもはるかに大きいものとされており、厚さ計が担う役割はより重要といえます。
表3.2.1-1に主な厚さ計の線源と測定用途を示します。

表3.2.1-1主な厚さ計用線源と測定範囲
線源 測定坪量値(厚さ)の範囲 主な測定用途
147Pm(β線) 5〜100g/m2(5〜100μm)*1 新聞紙、上質紙、コート紙、 プラスチックフィルム、磁気テープ、ラップ
85Kr(β線) 10〜1200g/m2(10〜1200μm)*1 上質紙、コート紙、クラフト紙、板紙、プラスチックシート
204Tl(β線) 15〜1500g/m2 プラスチックシート
90Sr(β線) 100〜5000g/m2(0.1〜5mm)*1 板紙、プラスチックシート、ゴム板、金属箔、建築材、ガラエポ樹脂、不織布
241Am(γ線) 0〜60kg/m2(0〜5mm) 銅板、板版、アルミ版
137Cs(γ線) 20〜500kg/m2(4〜100mm) 銅板、H型鋼、シームレスパイプ
*1 カッコ内の数値は、測定対象の材質の密度が、1.0の場合における厚さです。

(1)β線厚さ計
β線厚さ計は、β線源から照射されたβ線が、被測定物の厚さに応じて滅衰する性質を利用して被測定物の厚さを測定する装置で、紙や、数ミリ以下の比較的薄いフィルム・シートなどの厚さ測定に多く使用されます。被測定物の厚さ範囲に応じて、147Pm、85Kr、90Srのβ線源が多く使用されています。
図3.2.1-1に紙の坪量値(単位面積重量)を測定するβ線厚さ計の基本的な構成を示します。β線厚さ計は、滅哀したβ線の強さを検出する電離箱、電離電流を増幅するプリアンプ、厚さ信号を工業単位(厚さ、または坪量値)に変換する演算部で構成されています。紙のように薄い材料の厚さを正確に測定するためには、測定ギャップ中における温度変化により密度が変化する空気の影響を無視することはできませんので、厚さ測定中は常に温度補償を行ったり、恒温化したエアで測定ギャッブを満たすなどの工夫をしています。写真3.2.1-1にβ線厚さ計を示します。

図3.2.1-1 β線厚さ計の基本構成

写真3.2.1-1 β線厚さ計

 β線厚さ計の検出器と線源部は、被測定物を挟んだ位置にフレームと呼ばれる支持装置に固定され、被測定物の幅方向に走行しながら厚さを測定します。フレームの種類は、O型フレーム(図3.2.1-2)が一般的ですが、狭い幅の被測定物の厚さを測定するC型フレーム(図3.2.1‐3)もあります。

図3.2.1-2 O型フレーム

図3.2.1-3 C型フレーム

 紙パルブ業界の抄紙プロセスで使用される厚さ計は、紙の坪量(面積重量)を測ると同時に紙に含まれる水分量や、灰分量、表面の色などを測定するセンサなどと組み合わせて使用されるのが一般的で、B/M計(坪量/水分計:Basis Weight and Moisture Sensor)という名称で広く使用されています。B/M計は、オンラインで抄紙状態を測定すると同時に、オンライン情報を使用して抄紙ブロセスの制御も行っています。

(2)γ線厚さ計
γ線厚さ計は放射線応用機器の最も基本的な計器であり、γ線を被測定物に照射し、その透過γ線量から被測定物の厚さを測定するものです。
例えば、被測定物の厚さをX、測定物がないときのγ線量をF0、γ線のエネルギーと測走物の材質によって決まる定数(吸収係数)をμとすると、透過γ線量Fは下式で表されます。
(1)

 従って、μが既知であり、FとFが測定されれば被測定物の厚さXは計算でもとまります。ここで厚さに対する測定誤差は経験的にμxが1〜2の場合が最小となることから、被測定物の厚さに応じて吸収係数を選択することが必要となります。
 これにはγ線のエネルギーを変えることで対応しており、半減期、価格、入手の容易さなどの観点から、241Am,137Csのγ線源を用います。

 γ線厚さ計は主に鉄鋼業に使用され、図3.2.1-4に示すとおりγ線源を格納する線源容器と、γ線を検出する検出器、測定物を挟んで線源容器と検出器を保持するC型フレーム、検出した信号を厚さに変換する変換器から構成されます。
 線源容器は密閉耐火性容器として製作され、漏洩線量を小さくすると同時に測定精度を向上させるため為のコリメータ付き鉛シールドと、遠隔操作のシャッタ機構とで構成されます。241Amを使用した厚さ計では、検出器としてXeガスを封入しとしてた電離箱が主に使用され、137Csを使用した厚さ計ではプラスチックシンチレータが用いられます。
 変換器は検出器出力のA/D変換を行い、デジタル化された電圧信号は演算処理器にて各種の補正を受けた後、被測定物の厚さに換算されます。
 なお、C型フレームには、フレーム全体の駆動用電動機とシャッタ開閉表示灯が取り付けられており、使用場所が熱間圧延工程使用の場合は、フレーム自体を水冷するとともに、しゃ熱カバーが取り付けられます。

図3.2.1-4 γ線厚さ計の測定装置

使用例として、241Am線源を使用した厚さ計は
8mm程度までの鋼板、4mm程度までの銅板、20mm程度までのアルミ板測定137Csを使用した厚さ計は
4.5mm〜100mm程度までの厚板鋼板測定
3方向放射線ビームを使用した、シームレスパイプ、H形鋼測定に用いられます。


(3)X線厚さ計
 X線厚さ計は、X線の透過線量が被測定物の厚さに対応して変化することを利用して、被測定物の厚さを測定する装置で、高精度、高応答を特長とし、主に鉄鋼業の圧延ライン、検査ライン等に設置され、高速走行中のストリップの厚さを非接触で連続的に測定します。
 X線厚さ計は、図3.2.1‐5に示すようにX線を放射させるX線発生器、校正曲線(検量線)を作成する基準板、被測定物で散乱、吸収されたX線を検出する検出器(電離箱、電離電流を電圧に変換するプリアンプ)、これらを保持するC型フレーム、検出した信号をA/D変換し、各種の補正処理を行い厚さ信号として出力する演算処理ユニット、D/A変換器から構成されます。
 この厚さ計はシングルビーム方式の厚さ計で、あらかじめ校正用基準板を使用して、測定範囲全域の校正曲線を作成し、検量線として記憶しておきます。そして、測定時には被測定物を透過して得られた検出信号を検量線にあてはめて板厚を求めます。
 測定範囲全域は、図3.2.1-6の検量線概念図の通りに複数の測定レンジに分割されています。校正曲線は、各測定レンジ毎の検量線の組合わせにより表されます。
 検量線作成時には、自動的に基準板の挿入、検出器出力の読込等が行われ、校正データは演算処理され演算処理ユニットのメモリに記憶されます。そして、被測定物の測定時には検出器出力を読込、記憶された検量線から板厚を演算処理して出力します。
 写真3.2.1-2に代表的なX線厚さ計の概観を示します。

図3.2.1-5 X線厚さ計の基本構成

図3.2.1-6 検量線概念図

写真3.2.1-2 X線厚さ計

 X線厚み計には冷延用と熱延用があり、冷延用は13mmまでの軟鋼板の測定に、熱延用は30mmまでの軟鋼板の測定に使用されます。
その他、銅板、アルミニウム板の測定にも使用されます。

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