2.1.4 γ線

 原子核では陽子と中性子が核種に固有なエネルギーの準位におさまっている。それぞれの準位に収容できる核子数は決まっており、通常の原子核では最も低いエネルギーの準位からすき間なくおさまっている。このとき原子核は基底状態であるという。これに対して、1個または複数の核子が基底状態よりも上のエネルギーの凖位に跳び上がっているとき、原子核は励起状態にあるという。
 普通、励起状態の原子核は不安定で、きわめて短時間にエネルギーを放出して基底状態に移る。エネルギーの放出の形式には、γ線(光子、きわめて波長の短い電磁波)を放出する場合と、軌道電子に運動エネルギーを与えて放出する場合がある。後者を内部転換(IC:Internal Conversion)といい、原子核に近い準位(K軌道)の電子が放出されることが多い。放出されるエネルギーは原子核の励起エネルギーに相当するので、γ線や内部転換電子のエネルギーは核種によって決まった値を持つ。
 まれに励起状態が比較的安定で、しばらくとどまることがある。このような励起状態にある原子核を核異性体と呼ぶ。核異性体は質量数の後にmを添えて、例えば137mBaと記述する。
 核異性体がエネルギーを放出して別のエネルギーレベル(多くは基底状態)に移ることを核異性体転移(IT:Isomeric Transition)という。
 α壊変,β壊変、軌道電子捕獲によって核変換が生じた際に、娘核種が励起された状態になることがしばしばある。そのため、核変換に伴ってγ線や内部転換電子が放出されることが多い。例えば、60Coは、β−壊変によって100%の確率で60Niの2.5MeVの励起状態を生ずる。この60Niは、ただちに1.17MeVと1.33MeVの2個のγ線を放出して、基底状態の60Niに移る。また、137Csはβ-壊変核種であるが、その際94%の確率で、137Baの662keVに励起した核異性体である137mBaに変化する。137mBaは90%の確率で662keVのγ線を放出するとともに、10%の確率で内部転換電子を放出する。内部転換電子のエネルギーは、(662keV-[軌道電子の束縛エネルギー])であるが、K軌道電子では625keVになる。