1. FAシステム

FAと言ったとき、その定義は多様である。ファクトリーオートメーションと言う言葉から工場すなわちモノ作りの現場の自動化を指すもので、プロセスオートメーション(PA)に比べてより広い意味となる。生産管理から製造ライン制御、原材料受け入れ、製品出荷、倉庫管理、各々のライン間の物流など全てにわたる自動化システムである。これに技術開発、経営管理を加えてコンピュータで統合した生産方式がCIMである。FAシステムと言うと物流、搬送を含むディスクリート・プロセスの自動化システムと言うイメージが先に立つ人が多いようだが、既述の如くPAを包含した概念であると捉えるべきであろう。

近年FAにおいては、ご多分に漏れず大きな流れとしてダウンサイジング、ネットワーク化、オープン化、マルチメディア化が進んでいる。また、後述するシステム階層の下位の部分ではコントローラのパソコン化が進んでいる。FA現場におけるパソコンの活用には目を見張るものがある。プロセス制御と異なり、生産される製品寿命が短い加工組立ラインでは特に次々と生産品目が変化し、その度に設備もその対応が求められる。そこで、ソフトウエアを手軽に変えられる柔軟性が求められ、パソコンが多用されている要因ではないかと推測される。現在ではひととおり普及してきており、ヒューマン・インターフェース部分をタッチパネルやシートキー付のグラフィック・ディスプレイ・ターミナルを用いたFAシステムが普及している。

1.1 システムのオープン化
FAのオープン化の論議も活発化されてきた。FAのオープン化はユーザ主導で進められてきたが、FA機器メーカがこの変化に追いつけないままユーザ要求になかなか応えられなかったのが現実であった。CADデータやPCのプログラミング.データ、通信プロトコルなど、ユーザの声がいよいよ高くなって本腰を入れて取り組み始めた状況である。こうしたユーザとメーカの思惑の違いに苛立ったアメリカの自動車メーカ・ビックスリーがOMAC(Open Modular Architecture Controllers)ペーパを起案し、1995年1月に公開した。こうしてコントローラのオープン化が今後いっそう加速されるであろう。

ネットワークについてはイーサーネットがデファクト・スタンダードとなりすっかり定着した感がある。このほか計装サイドからフィールドバスが提唱され実用の段階に来た。また、IEEE1394バス、今回、後述するPHS無線を使用したネットワーク等新しい試みが行われている。いずれにしてもシステム階層の全てに万能ではなく、階層ごとにそれぞれの特徴を生かした使われ方がされていくものと考える。

1.2 情報ネットワークの構築
FAシステムは生産方式の変化と共にその形態も変わっている。日本ではJIT(ジャストインタイム)と呼ばれる効率的な生産方式が海外へと渡り、米国ではリーン生産方式として導入されている。これにアジャル生産(Agile Manufacturing)が加えて提唱されている。大きな流れとしては情報技術を現場の隅々まで行き渡らせて、顧客と生産現場をリアルタイムでかつ正確に結んだ情報ネットワークの構築をさらに充実しようとの目論見がある。これは情報技術を活用して管理業務の合理化、高速化、高信頼化を狙うリストラクチャリングと言う動きで現れ、続いてリエンジニアリング、コンカレントエンジニアリングと言う形で提唱され実践されてきた。多品種少量生産の時代に顧客からの注文に「短納期で応える」のであれば製販一体によるシステムで何とか応えられるが「即応える」のであれば製・版のみならず資材調達、外部の納入業者まで「電子ネットワーク」によってデータ交換する体制を整える必要がある。そこで電子取引(Electronic Commerce)とかEDI(Electronic Data Interchange)等がキーワードとなる。

1.3 システムの階層
広範なFAシステムをあえて計測と制御の観点から絞って考えてみると、ISOのCIMモデルの複数階層をカバーする多階層システムは各種のオープンな「ビルドアップ・システム」であり、規模はその状況に応じているが生産管理、品質管理、設備管理の役割をになっている。

本章ではFAシステムを2つに分類して掲載してある。一つは工場全体を管理できる多階層システム、もう一つはローカル的に完結している単階層システム(スタンドアローン・システム)である。単階層システムは多階層システムのレベル2:ステーションレベル以下に相当するものである。



(1)多階層システム
一般的にCIM(Computer Integration Manufacturing)と呼ばれるもので、ISO/CIM階層モデル(ISO TC184/SC5)で定義されている。この定義は以下に示す6階層からなり生産現場から経営レベルまでの情報が結合・一元化され経済的かつ柔軟な生産システムを構築することができる。

■レベル6
経営管理レベル(企業レベル):Enterprise
企業および企業群全体を統括する経営管理システム
経営・事業計画立案・企業(群)経営情報管理・販売
需要予測・投資・開発計画等の機能を有する。
計画は 数カ月から年単位で行われる。

■レベル5
生産計画管理レベル(工場管理):Facility/Plant
工場・設計・研究の各部門等の各機能の経営的管理事業部、工場単位での開発生産・生産管理・物流システムが該当し、仕入先、協力工場、営業所等の情報統括も行う。生産計画・管理、製造指示、人事管理等の機能を有する。
計画は数週間から数カ月単位で行われる。

■レベル4
工程管理レベル(エリアレベル):Section/Area
生産部門における複数生産工程の工程管理、進捗管理、品質管理情報のフィードバック管理等を司るシステム。工程計画・管理(資材調達、製造加工検査・出荷包装)、設備計画・管理、物流管理等の機能を有する。管理サイクルは数日から数週間で行われる。

■レベル3
工程制御・監視レベル(セルレベル):Cell
生産ラインを構成する各装置の管理システムでレベル2の装置群の協調制御等を行う。加工セル制御、組立てセル制御、搬送制御等の機能を有し、制御サイクルは数時間から数日間で行われる。

■レベル2
装置制御レベル(ステーションレベル):Station
各組立加工自動機、自動試験機、搬送機等の生産ラインでの制御・操作指示の制御を行う。NC制御、自動試験機制御等の機能を有し、制御サイクルは数秒から数時間で行われる。

■レベル1
装置レベル(イクイプメントレベル):Equipment
ロボット、搬送機、NC機械等の装置の操作・実行。機能としてはNC工作機械、自動検査機器、搬送機器等の単機能で実行サイクルは数秒から数分で行われる。

以上の階層でレベル4からレベル1まではプラントオートメーションと呼ばれ、情報および実行でのリアルタイム性が要求される。したがって、これらの階層間はネットワーク等で接続され、階層間別にLAN、セルネット、フィールドバスが通常、用いられる。
レベル5での生産管理システムでは資材所要量計画システム:MRP(Material Requirement Planning)の手法を図り材料在庫の低減・適正在庫管理によるコスト低減・リードタイム短縮の実現に寄与することができる。
また、生産品の設計変更、特注仕様の対応としてCAD/CAMシステムとの統合により、生産現場でのNCデータの入替え、材料調達の変更を可能にしている例もある。
本技術解説ではレベル3以上を含む複数階層で構成されるシステムを多階層システムの位置づけとした。具体的にはハードウエア構成として各階層別にFAワークステーション・FAコントローラ等が多く用いられる。ソフトウエア構成としては各階層および機能毎にパッケージソフトウエアとして用意されている。
(参考文献:中西康二著「CIMからIMAへ」)



(2)単階層システム
本技解説では前述のISO/CIM階層レベルでのレベル2以下の単階層またはレベル1、2で構成されるFA用途のシステムを単階層システムと定義している。FAを完全に実行するためには多階層化が理想であるが設備導入の経済性からステーションレベルでの完結型設備がまだまだ主流であるので多階層と区別した。
PC(パソコン)の普及(高性能化・低価格化.標準機器化)に伴い、生産ラインでの実行レベルの装置の高機能化が進み自動試験機等においてはレベル2の機能を含むスタンドアローン併用型が主流になっている。その背景として、多品種少量生産ラインにおいて生産品種切替え作業が増大し、装置設備のフレキシブル性の要求が大きくなり、PC制御の単階層システムが主流になったと思われる。PCを制御機器として使用することにより上位の階層のネットワークに簡単に接続できることは言うまでもない。(FA機器のオープン化に寄与)

1.4 無線ネットワ−ク
実用段階に入ったPHSのFAシステムへの応用について述べる。

図2 PHS網系統図

PHS網に接続するFA機器側のPHSモデムは3つのタイプがある。
(1)一つはPCMCIAバスに直結できるもので、モバイルコンピュータとの接続して使用される。
(2)二つ目はRS−232Cを介して使用するもので、もっとも一般的にFA機器に接続できるものである。
(3)三つ目は特殊でFA機器と一体化されたもので、PHS付バーコードリーダ等がある。

各PHSモデムはそれぞれ電話番号が付与され、電話接続・切断にはそのための簡単なソフトウエアが付加しなければならない。また現在市販されているPHSモデムは公衆網・自営網どちらにも接続できる機能を持っている。公衆網に直接接続する場合は通信事業者から番号付与してもらい、通常の電話と同様に基本料金・通話料金が加金される。自営網の場合は使用者が番号付与でき、料金は加金されない。
最後にFAでの実用事例をあげ応用の参考にしたい。

(1)工場内の省線化
高度化するFA機器間の配線は増大しつつあり、不安全性、故障要因の増大、設置工事の複雑化に加速を付けている。この問題を解消するために、PHS無線を使用している。

(2)移動機器との無線データ通信
FAの中で移動機器への各種指示・データ収集が困難であった。PHSモデムをフォークリフト、搬送ワゴン等に搭載し、移動機器と管理者とのデータ通信により、緻密で効率的な稼働が可能になった。

(3)クリーンルームと外部の無線データ通信
クリーンルーム内に設置した既設機器を配線することなく外部とのデータ通信が可能になり、めんどうな工事が解消された。

(4)高所取付機器とのデータ通信
天井等に取り付けられた表示器等へデータ線を配線することなく無線でデータ送信を行い作業者等への情報伝達を行っている。

(5)小規模事業所のLAN構築
既設の小規模事業場のLANを無線で実現。コスト低減に貢献できている。数台のNC工作機械とかプリント板実装機器のプログラム管理、生産進捗管理、故障検知等に使用している。

(6)異常監視・遠隔異常診断・保守要員サポート
機器の保守体制を強化するために使用。特に保守要員のサポートに現場画像の送信、管理事務所からの指示、保守マニュアルの送信等をデータ通信、音声通話で行いより効率的な保守に貢献できる。

以上、各所で手軽な無線通信手段として実用化に向かっており、幹線は従来の有線LAN、支線は無線のPHSと区分して活用されている。また、PHSは公衆PHS網はもちろんであるが、ISDN回線にも入り込めることから広域ネットワークとしても使用されている。FAではないが自動販売機の遠隔管理、電力・ガス等の自動検針に実用化されようとしている。