3.3 通信/ネットワーク機器

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産業オートメーションシステムの標準化を行っているISOのTC184/SC5/WG1では、オートメーションシステムの基本構造として図1に示す6階層の参照モデルを提案している。これがいわゆるCIM6階層モデルである。このモデルは機能の論理的階層であり、物理的なシステム構成を表すものではない。  ここに掲載対象とした通信/ネットワーク機器は、主に図1のセルレベル以下のいわゆる制御領域で用いることを前提としした制御用ネットワーク関連製品としている。

図1 ISO TC184 CIMリファレンスモデル

近年、現場センサや機器を個別配線で行っていたところにもネットワーク化を図った製品の普及が進んでいる。日常的に発生する現場センサや機器の追加・変更にフレキシブルに対応できることになれば、ライフサイクル的な見地から今後一層採用が進むものと思える。

 本章では、通信/ネットワーク機器を次のように分類している。

(1)チップ・ボード類
制御用ネットワーク機能を提供する各種ボード・チップ類。

(2)その他の通信/ネットワーク単体機器
ゲートウェイ、テストツールなど単体にて販売している制御用ネットワーク機器。

(3)制御用ネットワークソフトウェア
通信スタック、開発者用ソフトウェア、テストソフトウェアなど単体パッケージとして販売しているソフトウェア。

以下、セルレベル以下の制御用ネットワークの標準化動向について概説する。



3.1 OSI(Open Systems Interconnection)
ネットワーク構築を合理的かつ将来への拡張性や柔軟性を考慮したものにすると、標準化の問題に遭遇する。ユーザにとって、ネットワークの標準化の利点は、マルチベンダ化の実現による最適な機器やシステムの自由な選択と組み合わせにある。この実現のための基本がOSIであり、ISO(国際標準化機構)、ITU−TS(電気通信標準化セクター:旧CCITT)およびIEC(国際電気標準会議)が協力して標準化を進めてきた通信規約の体系である。
OSIの基本コンセプトとしての「参照モデル」は、図2のように7層に階層化しており、制御ネットワークも基本的にはこのモデルに準拠して検討されている。

図2 OSI参照モデル



3.2 制御用ネットワークの区分
図1のセルレベルのFA制御では各製造工程(セル)のグループ化したまとまった機械設備群を対象とした制御を行い、エリアレベル間とは主に生産指示データのダウンロードと実績データのアップロードを一般に時間単位で行う。これらをつなぐネットワークとして、かつてMAP(Manufacturing Automation Protocol)の標準化が行われ今日の制御用ネットワークの規範となる要素技術を多く残したものの、残念ながらネットワークそれ自身は普及には至らなかった。
ステーションレベルにおいては一つのセル内を対象としたFAマシン制御を行い、同レベルとステーションレベル間では、分単位の生産指示データのダウンロードと実績データのアップロードを行う。これらの情報を授受するためのセルレベルの制御機器とステーションレベルの制御機器を結ぶネットワークを一般にセルネットワークと称している。
さらに、最下層のデバイスレベルとの接続は、図3に示すように現場に置かれるセルレベルの機器が単純な機器から複雑な機器まで多岐に渡るため、目的に応じた種々のネットワークが考えられている。

図3 フィールドネットワークの接続対象となる機器

単純な機器の代表としてはディスクリートな制御機器があり、近接スイッチ、リミットスイッチ、コンタクターなどがその代表例である。これらの機器は、オン−オフや機器の状態など通信データ量としても数バイトで収まってしまうような機器である。複雑な機器にはプロセス用機器である伝送器やループコントローラ、さらにFA用としてバーコードなどがあり、アナログ量や各種パラメータ情報さらに診断情報なども付加され通信データ量としても数十から数百ワードの情報量となる。
米国のNEMA(National Electrical Manufactures Association)では、上記のフィールド機器を接続するネットワークをそのデータ長を基本に図4のようにビット単位ネットワーク、バイト単位ネットワーク、データネットワークの三種類に分類している。

図4 フィールドエリアネットワーク

近年では、ビット単位ネットワークをセンサーバス、バイト単位ネットワークをデバイスバス、あるいは両者を総称してセンサーバスとも呼び、さらにデータネットワークをフィールドバス(ここでは一般名称としてのフィールドバスであり、フィールドバス協会で実装規約化を行っているフィールドバスを指すものではない)と称している。

そして、これら3種のネットワークを一括してフィールドネットワークもしくはフィールドエリアネットワークと呼んでいる。
さて、センサーバスは、主にインテリジェンスを内蔵しない簡単なオン/オフ・スイッチやマグネットのようなデバイスを芋づる状に接続して上位のシステムに対して分散I/Oとしての機能提供を主眼としている。

一方、フィールドバスはよりインテリジェントな機能を持つ機器を対象とし、複雑な通信機能を提供する。たとえば複数のパラメータを一括伝送したり、上位からフィールド機器にプログラムをダウンロードしたりするようなことも可能である。
センサーバスとフィールドバスはシステム制御を行うに当たり対立し合う選択肢ではなく、互いに補完しあい制御システムを構成する関係にある。

3.3 主な制御用ネットワーク
 制御用ネットワークの標準化について以下に記す。

図5 いろいろなフィールドエリアネットワーク

(1)JEMA JPCN−1
PC本体とフィールド機器の結合のため、マルチベンダ環境でI/O、メッセージ転送、コントロールを実現するためのサービスの提供を目的とし、センサーバスに相当する。
1988年に(社)日本電機工業会(JEMA)にPC業務専門委員会、PC技術専門委員会が設立され、専門委員会傘下にネットワーク分科会が発足し、PC下位ネットワークの検討に取り組んでいる。1989年にドラフト第一版が完成し1990年に仕様公開を行った。表1に概要を示す。

表3.1 JEMA JPCN−1概要
通信アクセス HDLCサブセット(1:N)
伝送路形式 マルチドロップ(バス式)
電気的特性 EIA RS−485準拠
絶縁方式 フォトカプラまたはパルストランス式
伝送符号 NRZI
伝送速度 Max.1Mbps
局数 1マスタに対し31スレーブ
伝送媒体 より対線
配線数 2線式/3線式
ケーブル総延長 Max.1Km


(2)ME−NET
もともとは自動車の製造設備システム構築に必要なマルチベンダーニースに基づき開発実用化を行ったものである。その後、1990年に対応機器を増やし機器コストを安くするために仕様のオープン化を行い、ユーザ・ベンダー両者の参画を得て普及活動を展開している。

表3.2 ME−NETの仕様
項目 仕様
アクセス方式 IEEE802.4サブセット(トークンパス)
接続形態 バス方式
伝送速度 1.25Mbps
最大伝送距離 1Km
ノード数 最大64局
変調方式 位相連続周波数変調方式(キャリアバンド)
符号化方式 NRZ
通信媒体 JIS C3501 75Ω同軸ケーブル
通信機能 データリンク(リレーリンク・レジスタリンク)
コンピュータリンク
データリンク容量 リレーリンク:Max2048点(256バイト)
レジスタリンク:Max2048バイト


(3)FL−net
FL−netの対象は、生産システムにおけるプログラマブル・コントローラ(PC)、ロボット・コントローラ(RC)、数値制御装置(NC)等の制御装置や制御用パソコン間におけるデータ交換をおこなうためのネットワークであり、(社)日本自動車工業会から提案された「FAネットワーク要件」をベースに(財)製造科学技術センターにて既存ネットワーク技術の調査から開始し、基本仕様を策定したものである。
FL−netは、物理層/データリンク層にETHER−NETを、トランスポート層/ネットワーク層にはUDP/IPを使用し、その上位にFL−netで定義したプロトコルである、FAリンクプロトコルを実装する構成になっている。

(4)FONDATIONフィールドバス
FONDATIONフィールドバスは、IEC61158に準拠しフィールドバス協会にて実装のための規約化が行われたものであり、いわゆるH1と称される従来の4−20mAアナログ伝送に替わるフィールドレベルの低速ネットワークとH2と称される高速ネットワーク(1Mbps、2.5Mbps)からなる。現在ではH2ネットワークに替わり、High Speed ETHERNETをベースとした制御システムのバックボーンとなる高速仕様ネットワークの仕様化が進められている。主にプロセス制御を対象としており、同制御に必要な周期的通信強いアーキテクチャを持つ。また、通信スタックの上位に位置するユーザ機能も含め標準化しており、PIDなどの制御機能のフィールド分散も可能とする特徴を持っている。
High Speed ETHERNETをベースする仕様は1999年末に発行予定である。

(5)PROFIBUS
PROFIBUSは、FA制御のステーション・セルレベルの接続を主対象としたPROFIBUS−FMS、センサーバスに当たるPROFIBUS−DP、およびPROFIBUS−DPを基本にプロセス制御を対象としに機能付加されたPROFIBUS−PAの3種の異なるコンセプトを持つネットワークであり、ドイツの国家規格(DIN19425)として、またヨーロッパ標準規格 EN 50170の一つとしても承認されている。
PROFIBUSはバスアクセス方式としてトークンパスとマスタースレーブ方式を基本とし、応用層はMMS(Manufacturing Message Specification)のサブセットであるFMS(Fieldbus Message Specification)を採用(PROFIBUS−DPを除く)している。

(6)ControlNet
ControlNetは、コントローラ間やリモートI/Oとの信号の授受など一定時間内での確実な応答を必要とするデータや、プログラム、設定データのやりとりを行うネットワークとされており、プロデューサ/コンシューマモデルによるマルチキャスト通信方式をとる。

(7)各種のセンサーバス
表3に標準化中もしくは普及推進中の主なセンサーバスの仕様を示す。
このうち、CAN(Controller Area Network)は、ベンツ/BMWの要求によりBoschが車載用LANとして開発した通信プロトコルであり、ダッシュボード、ブレーキ、ヘッドライトなどをシリアル通信で接続し、省配線および分散制御を目的としてしている。
また、CANは物理層上位からデータリンク層までの規格でありISO11898で国際標準化が行われている。CANをベースに制御用に拡張したネットワークにDeviceNetやSDSがある。

各種のセンサーバスの参考文献:
(1)中山、フィールドネットワークの現状とフィールドバスの位置付け、SICEセミナー、1995.7
(2)中山、FA制御ネットワーク、エレクトロニクス、1996.11
(3)甲斐、フィールドバス基礎ブック、オーム社
(4)(財)製造科学技術センター、FAコントロールネットワーク成果報告書、1998.6

表3.3 各種のセンサーバスの仕様
  CAN LONWorks INTERBUS-S PROFIBUS-DP ASI
スタック構造 下位2層 全層 下位2層+AP層 下位2層とDDLM 下位2層
メディア 5線式対より線 2線式対より線、同軸、光、無線 5線式対より線光 対より線、光 2線フラットケーブル
伝送速度 20Kbps
〜1Mbps
600bps
〜1Mbps
500Kbps 9.6Kbps
〜1.5Mbps
167Kbps
総延長距離 125Kbps/500m
250Kbps/200m
500Kbps/100m
78bps/1500m
1.25Mbps/500m
:対より線
12.8Km 1.5Mbps/200m
75Kbps/1200m
100m
接続台数 64台 32325 (128/セグメント) 256台 32台/セグメント 31台
トポロジー バス バス他フリー ループ バス ツリー
アクセス方式 CSMA/NBA 予測CSMA 時分割スキャン マスターマスタ:トクーンパス
マスタースレーブ:ポーリング
1:Nポーリング
データ長/フレーム 0〜 8byte 最大228byte 4bit〜64byte 1から246byte 4bit
対応標準 ISO DIS 11898 DINI19258 DINI19245 IEC
推進団体 ODVA Echelon社 Interbus−S C1ub PNO ASI協会
普及状況 DeviceNet,SDSとして製品化適用 米国BA業界で普及中 独国内で自動車業界を中心に普及中 PROFIBUS ファミリーとして独中心に普及 独中心


3.4 Webネットワーク
 近年、Web技術を使ったユビキタスシステムが製品化されている。ADSLや光ファイバーによる常時接続環境が整ってきたことや、無線LAN、携帯電話などの無線データ通信の普及により、どこにいても情報を得ることができるユキピタス情報社会が実現されつつあり、発電所や上下水道などの社会インフラの設備・機器や、工場の設備・機器をインターネットなどの公衆回線を介して計測・監視するサービスに使われている。

(注)ユビキタス(ubiquitous);ユビキタスの語源はラテン語で、いたるところに存在する(遍在)という意味。インターネットなどの情報ネットワークに、いつでも、どこからでもアクセスできる環境を指し、ユビキタスが普及すると、場所にとらわれない働き方や娯楽が実現出来るようになる。
ユビキタス・コンピューティングは、メインフレーム(複数で一台を使用)、PC(一人一台)、に続く、一人が複数のコンピュータを使う第3世代を示したもので、マーク・ワイザー氏が提唱した。(サイバービジネスの法則集)

3.5 通信/ネットワーク機器のエンジニアリング
 通信/ネットワークには接続される機器を含めたシステム構築機能が要求される。また、仕様がオープンであり、多くのメーカが適合製品を供給されていることも、多様なシステムを構築する上から重要である。また、システムを構築するエンジニアリングや機器のメンテナンス・保全がライフサイクルコストを左右することから、この部分の開発が進められている。

 (1) 接続機器の相互運用性
 (2) 接続機器のエンジニアリング
 (3) 接続機器のアセットマネジメント


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