4.放射温度計

 物体の温度が0K(−273.15℃)以上にある物体は,その表面から熱エネルギーを放射している.この熱放射エネルギーの量は温度によって決まり,光と同様に空間を伝搬してエネルギーを輸送する性質があるので,これを利用すれば物体とセンサを接触させなくとも温度が測定できる.熱放射エネルギーの波長は0.1〜1000μmに分布するが,温度測定には0.4〜25μmの可視光及び赤外域が利用され,高温測定には短い波長帯が,低温測定には長い波長帯が利用され,−50℃程度まで実用化されている.
 放射温度計の関連規格として,JIS C 1612「放射温度計の性能表示通則」が1988年に制定されている.またJIS Z 8706「光高温計による温度測定方法」による温度測定方法には,計測上の注意事項,放射率,外乱要因等について記載されている

図1.1.4 放射温度計の構成

 放射温度計の構造は図1.1.4の様に,放射エネルギーを収束し光利得を高めたり,特定波長を選択したりする光学系と肉眼および物理眼のPbS,Si,サーモパイルおよびサーミスタボロメータ等を用いて,放射エネルギーを電気信号に変換する検出素子,および指示演算等のための電気回路から成り立っている.
放射温度計の分類は以下のように分類できる.
 (1)単色放射温度計
 (2)部分放射温度計
 (3)全放射温度計
 (4)2色放射温度計
 (5)走査型放射温度計
詳細は各メーカのカタログ等を参考にされたい.
 放射温度計の特徴は,被測温物に接触させることなく温度測定が行えるため,移動物体や高温物体の測定,また温度センサを接触させることにより熱じょうらんを起こすような小熱容量物体,表面温度など測定対象物の温度を変化させずに測定できることである.また,応答性に優れている.
 なお,放射温度計の採用に当たっては対象物体の放射率と外乱について考慮が必要である.
 最近は表面温度分布を測定し,ディスプレイに表示する製品や,光ファイバを用いて遠距離に信号を伝送するタイプが出てきている.

表1.1.5 放射温度計の使用温度範囲