1.1 温度計

1.はしがき

 温度に関して最も基本となる“温度目盛”は1968年に制定された「1968年国際実用温度目盛」IPTS−68が国際的な温度標準であったが,1990年からは「1990年国際温度目盛」ITS−90が採用され新しい基本となった.その結果各種温度定点が変更され,従来は100℃とされていた水の沸点が99.974℃となり,定義定点から外れた.この変更にともない,従来の温度目盛との差が800℃近傍で最大約0.4℃生じた.通常の温度測定では許容差の範囲内であるため大きな影響は生じない程度である.参考に表1.1.1にITS−90の定義定点を掲載した.

表1.1.1 温度定義定点
物質及びその状態
平衡水素の3重点 13.8033 −259.3467
ネオンの3重点 24.5561 −248.5939
酸素の3重点 54.3584 −218.7916
アルゴンの3重点 83.8058 −259.3467
水銀の3重点 234.3156 −38.8344
水の3重点 273.16 0.01
ガリウムの融解点 302.9146 29.7646
インジウムの凝固点 429.7485 156.5985
すずの凝固点 505.078 231.928
亜鉛の凝固点 692.677 419.527
アルミニウムの凝固点 933.473 660.323
銀の凝固点 1234.93 961.78
金の凝固点 1337.33 1064.18

温度の単位は,ケルビン(K)(熱力学温度の単位)またはセルシウス度(℃)(セルシウス温度の単位)で表し,国際標準化機構(SI)では“ケルビンは,水の三重点の熱力学温度の1/273.16である”と定義している.ケルビンで表した温度の数値Tとセルシウス度で表した温度の数値tとの関係はt=T−273.15である.
 1993年に関連法規として新計量法が施行され,温度標準に大きく関わる規格として,JIS Z 8710「温度測定方法通則」が1993年に改正された.さらに熱電対の規格であるJIS C 1602の改正が1995年7月に実施され,測温抵抗体の規格JIS C 1604の改正が1997年3月に実施された.
 工業用として一般的に使用される温度計は検出器の構造によって接触式と非接触式に分けられる.それらの特徴と誤差要因を表1.1.2にまとめた.これらの温度計の中から以下に示す項目を検討して,用途に合ったものを選ぶ必要がある.
 (1)測定温度範囲
 (2)測定精度
 (3)測定対象の種類・雰囲気・圧力
 (4)期待される応答速度
 (5)期待される寿命
 (6)設置環境
 (7)出力信号の種類・形態
 (6)受信計等の上位システム
 (7)互換性
 各種温度計の測定原理や種類・精度に関しては次項から解説する.
 各種温度計の測定上の注意事項や校正方法さらに「1990年国際温度目盛」に関しては,JIS Z 8710「温度測定方法通則」に詳しく述べられているので参照されたい.
 以下,下記の掲載区分に従い,簡単な原理,構造および特徴について述べる.
 1.1.1 熱電対
 1.1.2 測温抵抗体
 1.1.3 放射温度計
 1.1.4 熱膨張式温度計
 1.1.5 温度変換器(伝送器)
 1.1.6 その他の温度計